中国でネット制限なく使える旅行eSIMの選び方とオススメ【VPNやローミングも解説】
海外でのeSIM利用回数50回以上の筆者が教える、中国本土でもSNSやGoogleが使える旅行eSIMとそのからくり。
中国に旅行や出張で訪れる日本人の多くが気にすることのひとつに「現地でLINEやSNS、Googleが使えるか?」という点があります。
今やインターネットは普段の生活はもちろん、旅行や出張においても欠かすことのできないインフラであり、旅先で利用できるアプリやサービスに制限がかかるかかからないかは死活問題ですよね。
この記事では、昨今急速に人気が高まっている旅行eSIM(海外旅行用プリペイドeSIM)を選ぶ上で、この中国本土でのインターネット検閲(通称グレートファイヤーウォール)の不安や疑問を解消すべく、知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
結論から言うと、現在販売されている中国向けの旅行eSIMは基本的にすべてローミング通信を利用しているため、グレートファイヤーウォール(中国政府によるネット検閲)の影響を受けない = 中国滞在中においても日本と同じようにLINEやInstagram、Gmailなどのアプリやサービスを利用できるので、安心してください、ということなんですが、それを順を追って説明する記事となります。
海外旅行者向けeSIM検索・比較サイト「eSIMDB」に掲載されている、中国向け旅行eSIM(執筆時点で90種類、3,700プラン以上)は"すべて"中国国内でもネット制限を受けずLINEなどが問題なく使えます。VPNガーなど気にする必要はありません。
中国でのネット検閲「グレートファイヤーウォール」
すでに知っている方も多いと思いますが、中国本土では一部のオンラインサービスやSNSがアクセス制限を受けています。これは通称「グレートファイヤーウォール(金盾)」と呼ばれるもので、政府が国内のインターネット通信を監視・制御しているネット検閲です。
執筆時点で以下のようなサービスが対象となっており、これらは中国本土では通常利用ができません。
- Google系サービス: Google検索、Gmail、Googleマップなど
- SNS: Facebook、Instagram、X(旧Twitter)など
- メッセージングアプリ: LINE、WhatsAppなど
どれも日本人なら日常生活でめちゃくちゃ使っている、という方がほとんどかと思います。これら全て使えないとかなりつらいですよね。
こうしたサービスは中国国内の通信回線を使うとアクセスできないことがほとんどで、ホテルのWi-Fiはもちろん、現地で購入するSIMカード(中国の通信会社が発行するもの)を使う場合も、この制限の影響を受けます。
一方で、中国国外のサーバーを経由(ルーティング)する通信 = ローミング通信にはこの検閲が適用されません。
中国向けの旅行eSIMはまさにこの「ローミング通信」を採用しているため、検閲の影響を受けず、日頃日本で使っているのと同じようにネットを使えるというわけです。
なお、この点は日本の大手キャリアが提供する海外ローミングサービスでも同様で、これらのローミング通信も中国本土から一度日本やその他の国を経由する仕組みになっているため、グレートファイヤーウォールの影響を受けません。
余談ですが、現地SIMカードの購入手続きには身分証明書の提示が必要で、かつアクティベーションに時間がかかる場合もあります。また、言語の壁や支払い方法の制限があったりと、中国への短期旅行者や出張者にとっては利便性やストレスの観点からもおすすめしづらい選択肢と言えます。長期滞在でない限り、無難に旅行eSIMや海外ローミングサービス、あるいはWiFiレンタルを利用しましょう。
旅行eSIMとローミングの仕組み
まず前提として、eSIMとは「埋め込み型SIM」(Embedded SIM)のことで、スマートフォン等に内蔵された小さなチップに、通信プランの情報をインターネット経由で書き込む技術です。物理的なSIMカードを差し替える必要がなく、設定画面から簡単に通信プランを追加・切り替えできるのが特長です。
ローミング通信は中国国外を経由する
前述したように、中国向けの旅行eSIMは基本的にすべてローミング通信を利用しています。これは、中国から一度他の国を経由して通信を行う(インターネットに出る)仕組みです。
たとえば、中国国内にあるスマートフォンからインターネットを利用する場合でも、通信に使用している旅行eSIMが仮に香港の通信事業者から提供されたもので、香港経由のローミングとなっている場合、実際のインターネット通信は香港のゲートウェイを通じて行われることになります。つまり、物理的な場所は中国でも、ネット上では香港からアクセスしているような状態、ということです。
そのため、中国国内の一般的なインターネットトラフィックとは区別され、結果としてグレートファイヤーウォールの影響を受けないというわけです。
通信品質にも影響するローミング通信の経由地
ローミング通信では、経由する国と中国本土との物理的距離が通信品質に大きく影響します。
一般的に香港やシンガポール、タイなど中国本土に近い地域を経由するローミングの方が、通信の遅延が少なく、体感として通信品質が良い傾向にあります。
逆に、ヨーロッパやアメリカなど距離が離れた地域を経由するローミングは遅延が大きくなり、応答速度が遅いと感じることが多いです。
SNSやメッセージのやり取り、通常のネットブラウジングなどカジュアルなインターネット利用であれば特に気にする必要はないですが、できるだけ快適な通信環境を確保したいという方は、このローミング先も少し気にするといいかもしれません。
VPN機能付きeSIMの誤解
最近、「VPN内蔵eSIM」や「VPN搭載eSIM」といった表現を見かけるようになりました。中国でSNSやGoogleサービスを使いたい旅行者にとって、「VPNが使えるなら安心」と感じるかもしれませんが、このような表現は単なるマーケティング手法(宣伝文句)だと個人的には思っています。
VPNとは
VPN(Virtual Private Networkの略で、日本語では仮想プライベートネットワーク)は、インターネット通信を暗号化して外部からの監視や制限を回避する技術で、ネットワーク上の保護機能と言えます。
主な技術としてはトンネリング(仮想専用線の構築)、カプセル化(データの保護)、暗号化(データの解読防止)などがあり、これらにより通信内容を外部から見えなくします。
また、VPNはユーザーの本来のIPアドレスを隠し、仮想のIPアドレスを割り当てる役割もあり、これにより中国本土のグレートファイヤーウォールのような検閲や地域制限(ジオブロック)を回避することも場合によっては可能になります。
ただし、VPNサーバーのIPアドレス自体が中国(政府)にブロックされておればいくらVPNを使ってもグレートファイヤーウォールを回避できず、検閲の対象となってしまうことには注意が必要です。
旅行eSIMの「VPN搭載」は実際にはローミング通信のことを指しているだけ
旅行eSIMでたまにみかける「VPN搭載」や「VPN機能付き」といった表現は、実際には中国国外経由のローミング通信 = 閲覧制限なしで使える、ということを伝えるための(不正確な)マーケティング的な言い回しであることが多いです。というか現時点ではすべてそうだと思います。
ですが、この言葉だけを見ると、まるでeSIM自体にVPN機能が内蔵されているような印象を与えてしまうため、誤解を招きやすくなっています。
これまで説明したように、実際にはどの旅行eSIMでも中国国外を経由しているため、SNSやGoogleサービスを普通に使うことができます。VPNの有無とは無関係に、InstagramやLINEが問題なく使える理由は「ローミング通信だから」なのです。
ここで述べた重要な点をまとめると、
- eSIM自体にVPN機能があるわけではない
- グレートファイヤーウォールを回避できるのは単にローミング通信だからであって、VPNは関係ない
- VPN搭載と謳ってようがなかろうが、どの旅行eSIMもローミング通信を利用するため、グレートファイヤーウォールの影響は受けない
VPNアプリを使いたい場合は自分で別途インストールを
グレートファイヤーウォール回避には直接関係ありませんが、特定の国のIPアドレスを使いたいといった場合にはVPNアプリは便利です。自分で別途VPNアプリをデバイスにインストールして、ローミング通信の旅行eSIM + VPNアプリを使うことは普通にできます(もし使いたければ)。
ただし、再度になりますが、旅行eSIMのローミング通信自体ですでにグレートファイヤーウォールの回避は可能です。あくまでVPNはプラスアルファ、かつ別途自分で有効化が必要、ということです。

中国向け旅行eSIMの選び方まとめ
ここまで説明したように、現在市場で販売されている中国向けの旅行eSIMはすべてローミング通信を利用しています。そのため、中国で使う場合でも他の国を経由する形でインターネットに接続されます。
この仕組みにより、中国特有のネット制限を受けることなく、中国国内の利用においてもLINEやInstagram、Faecbook Messenger、Googleマップ、Gmailなどを日本と同じように利用することが可能です。
また、再度になりますが、VPN機能の有無は気にしなくてOKです。「VPN搭載eSIM」はあくまでマーケティング的な宣伝に過ぎません。実際には、どの中国向け旅行eSIMでもローミングによって閲覧制限を回避しており、何を選んでも中国本土でネット制限は受けません。
旅行eSIM選びで重視すべきポイント
それでは、何を基準にeSIMを選べばよいのか?と思う方もいると思います。
個人的には、無難に以下のような基本的なポイントに注目することを推奨します:
- データ容量:何GB使えるか(自分のインターネットの利用用途や頻度に応じて)
- 利用日数:何日間使えるか(滞在日数に合っているか)
- 価格:予算内か(そして海外ローミングサービスやWiFiレンタルなど他の選択肢と比較してコスパは妥当か)
これらのポイントを総合的に判断すれば、VPN機能の有無に惑わされず、自分に合った最適なeSIMを選ぶことができるでしょう。
また、気になる方は、どこを経由するローミング通信かもチェックできれば、通信の遅延を抑えた応答レスポンスの良い商品を選べる確率が高まります。(が、そこまでめちゃくちゃ気にする必要はないと思います。)
補足ですが、「データ無制限」を謳う旅行eSIMは大量にデータ消費すると速度制限がかかる場合がほとんどなので、個人的にはあまりオススメしません。十分そうなGB容量の中で安いやつを選べばいいと思います。そもそもデータを大量に消費しないのであればデータ無制限に飛びつく必要はないですし、eSIMはネット環境さえあればいつでもどこでも購入 & 利用開始できるので、万が一追加でデータが欲しい場合も購入は簡単です。データを大量に消費しそうな人はそもそもデータ無制限プランであっても速度制限がかかる可能性が十分にあるので、それなら最初から大容量データプランを買う方が使える上限がはっきりします。それでも足りなくなりそうなら追加で購入すればいいのですから。(いち個人の意見です。)
eSIMDBを使ってコスパの良いeSIMを見つけよう
最後に、世界最大の旅行eSIM検索・比較サイト「eSIMDB」で、自分のニーズにあったコスパの良いeSIMプランを効率的に探すコツを紹介します。
中国旅行eSIMの一覧ページでは、現在、90を超えるeSIMブランドが掲載されており、提供されているプランの数は3,700以上あります。

なお、すべてローミング通信で中国国外を経由するため、ネット制限なくLINEやGoogleサービスなどが利用できます。
絞り込み検索
「絞り込み」というボタンから、データ容量(GB)や利用可能日数、価格などからeSIMプランの絞り込みが可能です。

〇〇GB以上は欲しい、〇日以上使えるもの、価格は〇〇以下で、など自分の好みに応じて絞り込んでみましょう。
*上の画像では米ドル表示になっていますが、日本円表示も可能です。
プロモコードを使ってよりお得に購入
eSIMDBに載っている事業者(ブランド)の多くが割引コードを配布しています。特にまだ使ったことがないeSIMについては試してみる動機にもなりますし、ぜひプロモコードを活用しましょう。

中には↑のように回数制限のない、何度でも使える割引コードもあります。
ローミング先(経由地)情報
すべてのeSIMプランではないものの、一部のプランでは「プラン詳細」>「ローカルブレイクアウト」という項目で、ローミング通信の経由地(ローミング先)をチェックすることができます。

やや玄人向けではありますが、気になったeSIMプランを見つけ、購入を検討する場合はこちらの情報も載っておればチェックしてみてください。
「シンガポールなら遅延は大きくはなさそう」「香港なら遅延は小さいが、ChatGPTなど一部(香港で)制限がかかっているアプリがある」「ポーランドやアメリカだとやや遅延が大きくなりそう」といった具合に推測することができます。