eSIM台頭にみる海外旅行時のインターネット利用の選択肢と今後

海外旅行先でインターネットを使いたいという需要はここ10年で急速に高まりました。

eSIM台頭にみる海外旅行時のインターネット利用の選択肢と今後

海外旅行先でインターネットを使いたいという需要はここ10年で急速に高まりました。スマートフォンが普及し、ソーシャルメディアや地図アプリなど旅行で使いたいサービスもどんどん増え、もはや旅行先でのインターネットは必須となりました。

旅先でのインターネット需要は依存度によって大きく2つに別れると思います。ホテルやレストランのWiFiをスポットスポットで利用する程度で事足りるという人たちと、日本と同じように常にネットに繋がっていたいという人たちです。そして昨今は後者の人の割合が増えているように感じます。そして常にインターネットに繋がっているために必要になるのがモバイルネットワーク(モバイル通信回線)で、WiFiというエリアに限定されたものではない、常時繋がっている状態を可能にします。

person using Google map

現在、海外でモバイルネットワークを利用できる手段としては大きく分けて以下の3つがあります。

  • 現地SIMカードを購入する
  • モバイルWiFiルーターをレンタルする
  • キャリアが提供するローミング通信を利用する

これらの選択肢がeSMの台頭でどのように影響されるかを考察します。

現地SIMカードを使う

日本のAmazonその他オンラインショップや現地の空港やモバイルショップ、キオスク(コンビニ)などでSIMカードを購入し、それを端末に挿入して通信を行う方法です。この選択肢を利用していた旅行者は今後ほとんどeSIMに流れていくと考えています。

eSIMの台頭によって物理SIMの購入という行為はだんだんとなくなっていくでしょう。eSIMであればあらかじめプロファイルを端末にダウンロードして現地に着いた瞬間から利用できますし、複数のプロファイルを用意しておくこともできます。そしてSIMを持ち歩いたり失くす心配も一切ありません。SIMの購入という時間を大きく節約できるだけでなく、このように多様なメリットがeSIMにはあります。

ただし、物理SIMであれeSIMであれ、使用する端末は特定のキャリアにロックされていないSIMフリーである必要があり、且つ使用に関しては少しだけ設定などの知識が必要になる点がある種デメリットになります。

モバイルWiFiルーターをレンタルする

特に日本でメジャーなWiFiレンタル。空港でもたくさんの会社のカウンターや広告を目にします。誰でも比較的簡単に使えるというメリットはあるものの、借りて返すという行為が発生するため場合や人によっては面倒だったり、持ち歩くデバイスが一つ増えてしまう、さらには紛失のリスクなどのデメリットもあります。

イモトのWiFi公式サイトより

金額はケースバイケースで、短期間や一つの国だけの場合は安くなることも多いですが、長期間や複数カ国で利用する場合は高額になることもあります。

eSIMが一般に普及すると、間違いなくルーターをレンタルしていた層も一部eSIMに流れると予想します。持ち歩く端末が増えないですし、借りたり返す面倒もなくなります。ただし、SIMロックのかかった端末を使っていたり、SIMなどに疎くよく使い方がわからないといった人々は今後も引き続きルーターレンタルという選択肢を選ぶでしょう。

大手キャリアのローミングを利用する

日本ではdocomo、ソフトバンク、KDDIという3大キャリアが全てローミングサービスを提供しています。そしてそのサービスの内容や料金はひと昔前と比べ格段に良くなりました。

docomoは「パケットパック海外オプション」では国・地域限定プランで多少安い場合もありますが大体は一日あたり980円〜2,980円の料金で契約しているデータプランのデータ容量を海外でも利用できます。一方データ無制限で利用できる「海外パケホーダイ」というのもあり、こちらは一日2,980円になります。

ソフトバンクはアメリカ以外では「海外パケットし放題」というプランで、データ使用料が非現実的なほど少ない場合を除き一日あたり2,980円でデータが使い放題。そしてアメリカでは「アメリカ放題」というプランでデータ通信や電話が無制限に利用できます。ただし、使用できる端末がiPhoneやiPadなどに限定されており、アメリカでのネットワークもSprintに限定されます。

auは期間限定のキャンペーンを除き、基本的に一日(24時間)980円で契約しているデータプランのデータ容量を海外でも使用できます。

以上のように、どのキャリアであれ通常ですと一日あたりある程度の料金が発生します。使えるデータ容量に関しては昔よりもかなり良くなっており、国内のデータプランをそのまま海外でも使えるというのが一般的になりつつありますが、それでも数日の短期旅行でなければ5,000円以上の追加料金となる可能性は十分あります。また、国内のデータプランによっては月末にはギガが足りない、といったケースもあるでしょう。

ローミングサービスはeSIMと同じかそれ以上に簡単に利用できることがメリットではありますが、料金的には高額になるケースも少なくありません。したがってある程度出費を抑えたい方は大手3社で契約している人であってもeSIMのプリペイドデータプランを利用する方がはるかに安上がりになるケースも出てくるはずです。こうしたことから、料金をあまり気にしない裕福な層以外ではeSIMを利用するユーザーも出てくるように思います。

日本ではここ数年格安SIMが普及してきていますが、未だ全契約回線の9割近くは大手3社が握っています。今後ローミングサービスの料金が下がってくる可能性も十分にありますが、今の半額になっても場合によってはeSIMでプリペイドデータプランを利用した方が安い場合もあります。もちろん料金だけでなく通信速度など品質も大事になってきますが、品質に関してはeSIMであってもローミング通信を行うものも多いので、あまり大きな差は出ないはずです。