eSIMのユースケースは、サブ回線として海外旅行時での利用がメジャーになりそう

現在世界のキャリアが次々とeSIM向けのサービスを発表してきていますが、2回線目、いわゆるサブ回線向けがほとんどという印象です。

eSIMのユースケースは、サブ回線として海外旅行時での利用がメジャーになりそう

 現在世界のキャリアが次々とeSIM向けのサービスを発表してきていますが、2回線目、いわゆるサブ回線向けのポストペイドプランがほとんどという印象です。確かに今メイン回線として使っている物理SIMをeSIMに乗り換えても、そこまでメリットはないはずなので、当然の初動と言えます。2回線目に何を求めるかは、いくつかのパターンがありそうです。プライベートと仕事用を分けたいというニーズであれば2回線目もメイン回線に近い音声+データというプランを選択するでしょうし、メイン回線のデータがなくなった時のために、データ通信のみの低価格プランで2回線目をバックアップ的に使うというケースもあるかと思います。ただし、国内利用で2回線目が必要、あるいは欲しいというユーザーはそこまで多くないように思います。実際、eSIMのユースケースとしてもっとも求められているのは、海外旅行用ではないでしょうか。潜在的な需要では国内での利用よりも圧倒的に大きいと思っています。

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旅行先でのインターネット環境はこの時代、ほぼマストと言っても過言ではなく、多くの人がホテルのWiFiなど限られたエリアでの利用にとどまらず、モバイルネットワークを使用して「いつでもどこでも」インターネットを使える環境を求める傾向にあります。道がわからなくなった時に地図アプリを使う、外出中にメッセージのやりとりやソーシャルメディアに投稿する、といった行為はWiFiだけではなかなか難しく、モバイル回線が必要になってきます。現在、海外旅行時にモバイルデータ通信を使うことができる選択肢としては、以下の3つが主流かと思います。

  • モバイルWiFiルーターをレンタルする
  • 日本で使っているキャリアのローミング通信サービスを利用する
  • 現地のSIMカードを購入して使う

eSIMは第4の選択肢になり、eSIMを使うことができれば、モバイルWiFiルーターを借りる必要もなく、料金的に高額になったりデータ容量の制限がある場合のあるローミングサービスを利用する必要もなく、また物理SIMを購入して差し替えたり設定を行う必要もありません。eSIMはまさに海外旅行時の通信手段として、ゲームチェンジャーなのです。海外で毎回SIMを差し替えて使っている旅行者はもちろん、ルーターをレンタルしている人の一部もeSIMに流れるのはほぼ確実でしょう。そういう意味でeSIMを積極的に利用する、いわばアーリーアダプターは旅行者なのではないかと予想します。

 実際、「サブ回線(2回線目)」を「海外旅行用」として使うケース(ユーザー)が今後どんどん多くなると思います。自国でメインで使っている回線およびSIMはそのままにしておいて、一時的な回線としてeSIMを契約して海外で利用する、という形です。これが2019年からeSIMが利用されるケースで一番メジャーになると予想します。冒頭でも書いたように、国内利用で2回線あるいは2通信プラン必要な人はかなり限られます。サブ回線 = 海外旅行用というのが大多数のユーザーに当てはまるケースかと思います。ただし、この需要を満たすには、もっとプリペイドプランのeSIMサービスが増える必要があります。これは通信事業者、特にMVNOにとっても大きな商機の一つで、いかに旅行者向けにプリペイド式のeSIMサービスおよびデータプランを設計、宣伝し、使ってもらうかがカギになります。一人一人のユーザーは短期利用ではありますが、例えばインバウンドが好調な日本ではうまくやればコンスタントに数十万人の旅行者が利用するeSIMサービスも近い将来eSIMユーザーが増えれば実現可能です。

 尚、現在eSIMが徐々に普及し始めているアメリカでのユースケースとしては、基本はポストペイドで2回線目というサブ向けですが、そのプランの選択基準として、海外でのローミングプランが優れているキャリアのeSIMを契約する、というのが多い印象です。従って、メイン回線 = 国内利用、サブ回線 = 海外利用(or 国内+海外) という形でそれぞれ最適なプランを選択するケースがeSIMユーザーの中で多く見受けられます。ちなみにT-Mobileは先月からeSIM向けのプリペイドデータプランの提供を開始しており、日本人でもアメリカ旅行の際に一時的な回線として利用することができます。