GSMAが発表した中国のeSIMに関するレポートを読み解く

GSMAがリリースしたレポート「eSIM in China: the road ahead 」の内容から、コンシューマー向けに関しての情報で気になる点をピックアップしてみました。

GSMAが発表した中国のeSIMに関するレポートを読み解く

GSMAがリリースしたレポート「eSIM in China: the road ahead 」の内容から、コンシューマー向けに関しての情報で気になる点をピックアップしてみました。尚、レポートでは6章に分かれているのですが、後半部分はそれまでの内容と重複する部分が多かったり、規制や法整備に関してなので、今回は1章のExecutive summaryと2章のeSIM: the global pictureをメインに読み解きます。

aerial photography of CN tower

世界のモバイルエコシステムはeSIMを受け入れる

  • 世界のeSIMエコシステムはここ2年の間に急速に発展している
  • 90以上のモバイル通信関連企業がGSMAのコンシューマー向けリモートSIMプロビジョニングに対応しており、これがデファクトになりつつある
  • スマートウォッチから始まったeSIM対応端末は、現在AppleやGooleを筆頭に徐々にスマートフォンやタブレット、PCと増えてきている
  • Appleが最新のiPhoneでeSIMをサポートしたことはeSIMエコシステムにとってのある種のマイルストーンであった
  • 他の大手端末メーカーも順次eSIMに対応すると予想されるが、通常スマートフォンのリリースサイクルは約1年毎であるため、もう少し時間がかかるだろう

中国がeSIMエコシステムの基礎を築いている

  • 中国でのeSIMの進捗はスマートウォッチとIoTで特に顕著で、スマートフォンに関しては他国と比べやや遅れている
  • 中国でのeSIMの発展はまだ初期段階で、プロプライエタリーソリューションとGSMA規格が共存する状態にある
  • 中国でもGSMA規格がいずれはデファクトとなると予想されてはいるが、それまでには(移行期間としては)数年かかるだろう
  • クロスボーダーにはGSMA規格、国内向けには独自規格という両方同時並行というアプローチも複数の会社で検討されている

中国でのeSIM対応端末はスマートウォッチが先行

  • Apple、ファーウェイ、Mobvoi、サムスンなどのメーカーがeSIM対応スマートウォッチを牽引
  • キャリアはマルチSIM契約を提供し、ユーザーが一つの回線契約で複数の端末を利用できるよう配慮
  • 2018年、中国での成人のスマートウォッチユーザー率は前年比3%アップし9%に
  • eSIM対応スマートウォッチの割合はまだ少ないが、今後数年で増加すると予想
  • 中国でのeSIM対応端末はPCやタブレットも含め今後1年前後で広く拡大すると予想

eSIM対応スマートフォンは中国ではまだなし、主流になるのは数年先か

  • 製造から物流、サプライチェーン、そして顧客の理解度向上およぼカスタマーサポートに至るまで、モバイル通信エコシステムがeSIMに適応するまでは少なくとも数年はかかる見込み
  • 2018年末時点で10億台以上とも言われる中国でのスマートフォン利用者数から考えると、eSIMが市場に出てきても当分は従来の物理SIMモデルの流通も継続すると考えられる
  • GSMAの予測では、中国でのeSIM対応は初期に関しては他国にやや遅れを取るが中期的にはキャッチアップしてくる
  • 2025年までに中国では20〜35%のスマートフォンがeSIMを利用すると予想
  • 2025年までに中国は世界のeSIM対応端末の約5分の1を占める最大の市場となる見込み

世界にみるeSIMの現状

  • 世界でのeSIMエコシステムはここ2年で技術面、市場面ともに大きく発展した
  • 90以上のプレイヤー(企業)がコンシューマー向けのGSMA規格リモートSIMプロビジョニングをサポートしている
  • キャリア、端末やSIMベンダー、テック企業などがともに単一の、デファクトスタンダード確立のため歩み寄っていることが伺える
Source: GSMA
  • Apple、ファーウェイ、Mobvoi、サムスンがeSIM対応のスマートウォッチを開発し、さらにタブレット、PC、そしてスマートフォンとeSIM対応端末の幅が広がっている
Source: GSMA
  • 2018年9月のiPhone発表から、eSIMを利用できるキャリアは世界的に増えてきており、今後多くの端末がeSIM対応になるにつれさらにeSIMを利用できるキャリアの数は増えると予想される
  • GSMAの予測では、世界でのeSIM対応端末は2025年までに全体の25〜40%(約3分の1)になる
  • 大手スマートフォンメーカーは2019年から2021年にかけてApple、Googleに追随する形でeSIM対応のスマートフォンをリリースすると思われる
  • 多くの国では2025年までに新しいスマートフォンの85〜95%はeSIM対応になるのではないか
Source: GSMA
  • 技術面では今後コンシューマー向けとM2M向けのリモートSIMプロビジョニングを統合させる可能性もある
  • 中期的にはeSIM(embedded eUICC)がメインストリームになるが、integrated eUICC、trusted execution environment (TEE)、ソフトSIM + embedded secure element (eSE)など、新たな技術や形も模索されているが、いずれもセキュリティーが一番の懸念点
  • 現在のところはハードウェアベースのセキュアエレメントを使うeSIMが最もセキュアなソリューションということで多くの企業の見解が一致している
Source: GSMA
  • integrated eUICCなどのsystem-on-chipというアプローチを取っている企業やプロダクトも複数あり、2018年2月にARMが発表したArm Kigenもその一つ

所見

今回のレポートの表題は eSIM in China となっており、また、中国がeSIMエコシステムの基礎を作っている(laying the groundwork)ようなタイトルもレポート中に見受けられますが、中身を見てみると実際中国はコンシューマー向けスマートフォン市場では他国に遅れを取っており、中期的に追いつくという予想でした。もちろん中国のスマートフォンメーカーがeSIMエコシステムに与える影響はますます大きくなると考えられ、また2018年末時点で12億デバイスとも言われる中国の市場規模という面では、中国がeSIM普及にとって非常に重要なポジションにあるということは言うまでもありません。

本レポートは2019 - 2021年にかけてeSIM対応端末が増えてくるという予想や、2025年までに多くの国で新しいスマートフォンの85 - 95%がeSIM対応になるなど、具体的な時期や数値が出ている点で非常に参考になりました。

また、eSIM(embedded eUICC)以外の新たな技術や可能性についても触れられており、今後のSIM分野の発展をイメージできるいい資料となりました。