ヨーロッパでストークモバイルのeSIMを検証【北欧含む複数カ国で使用】
Stork MobileのeSIMをヨーロッパ4ヶ国で利用してみました。
先日ヨーロッパ方面に出張に行く予定があったので、以前から通信品質をテストしたいと思っていた自社サービス「Stork Mobile」のeSIMを、最新のiPhone 11 Proで実際に使ってみました。
自社サービスとはいうものの、実際にいちユーザーとして、この記事ではできる限り思ったことを素直にレビューするつもりです。
今回旅程およびトランジットの関係で、フィンランド、オーストリア、ハンガリー、そしてかなりマイナーですがモンテネグロの合計4ヶ国を訪問し、全て一つのeSIMでカバーできました。
ヨーロッパ周遊に使えるeSIMはStork Mobile以外にも複数ありますので、訪れる国や必要なデータ容量によってベストなeSIMを探してみてください。
Stork Mobileの概要
ストークモバイルは日本語でもサービスが提供されているため、日本人にとっては使いやすいeSIMではないでしょうか。サイトはもちろん、カスタマーサポートも全て日本語で利用できます。
今回使用したヨーロッパデータプランは現在以下の34ヶ国をカバーしています。
アイルランド、アルバニア、イギリス、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、クロアチア、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベラルーシ、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、北マケドニア(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国)、マルタ、モンテネグロ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルーマニア、ルクセンブルク
スイス以外ほぼ全てカバーされている、と言えば大きく外れていないかと思います。
各プランの料金は以下の通り。
- 1GB / 15 Days: $5.99(約650円)
- 3GB / 30 Days: $15.99(約1,750円)
- 5GB / 30 Days: $23.99(約2,600円)
- 10GB / 30 Days: $43.99(約4,800円)
料金はアメリカドルなので、為替レートによって日本円での金額は多少変わってきます。上記括弧内の金額はあくまで現在のレートでの参考とご理解ください。
ユーザー向けにはWebアプリが提供されているので、このアプリからデータ残量のチェックやデータの追加購入が可能です。
また、iPhoneとiPadなど複数のデバイスを持っている場合でも、一つのアカウントで複数のeSIMを管理することができます。
モバイルアプリは現在のところありませんが、どの端末でもブラウザ経由でアクセスできますし、アプリをダウンロードをする必要がなく、Webアプリでも必要なデータや操作は十分に可能です。
データプランの購入とeSIMダウンロード
公式サイトのデータプラン・料金のページから購入したいプランを選択すると、チェックアウト(購入プロセス)に進みます。
特に事前にアカウントを作成したり、ログインする必要などはありません。
今回はそんな使わないだろうとは思いましたが、外出先で仕事に使うことがあったり、ホテルのWiFiに万が一問題があった時のことなどを考え、大容量の10GBプランを選びました。
ここで名前、メールアドレスを入力し、利用規約等に同意したのち、支払いになります。
支払いの入力フォームも非常にシンプルです。クレジットカード一択ですが、Visa、MasterCard、Amexが使えます。
尚、実際の請求はカード会社によって決められた為替レートで日本円に換算された金額となります。(決済通過が米ドルの場合はそのまま。)
購入が完了すると画面上にeSIM(プロファイル)ダウンロード用のQRコードが表示され、メールでも同じQRコードが届きます。
左がメールで届いたQRコード、右が設定から「モバイル通信プランを追加」する所の画面です。
尚、eSIMのインストール方法はステップ毎にわかりやすく公式サイトに載っているので不安な方はあらかじめこれで予習することができます。iOS向けとAndroid向け両方あります。
eSIM(プロファイル)の追加が完了すれば、準備は完了です。
データプランの購入からeSIMのインストールまで、スムーズにいけば数分で終わります。
この他に、アカウント作成用のメールが届くのでそこからメールアドレスを認証し、アカウントを作っておくと前述のWebアプリを使うことができるようになります。ただし、必須ではありませんので、アカウントを作りたくない方はメールを無視してOKです。
ヨーロッパでの実際の通信品質
今回は関空からフィンエアーを利用したため、まずヘルシンキに飛びました。ちなみにフィンエアーは日本からの便数が多く、機内WiFiも良質なので個人的にとても好きな航空会社です。また、なにより飛行時間が10時間前後とヨーロッパの中ではもっとも短いため、負担も少ないように思います。
フィンランドで通信チェック
データプランを購入し、eSIMを端末にダウンロードしておればいつでも利用を開始できる状態になっているので、ヘルシンキ・ヴァンター国際空港(HEL)に到着後は、iPhone 11 Proの設定からモバイルデータ通信にStork Mobileを設定するだけでした。とても簡単、1分程で無事ネットワークに繋がり、すぐにデータ通信ができるようになりました。
この時点からデータプランの有効期限(10GBプランの場合は30日)がスタートします。
フィンランドでのローミング接続先はDNAで、LTEを掴みました。
東南アジアなどでは空港は市街地から離れていることから電波があまりよくない場合もときどきありますが、ヘルシンキ空港は流石にしっかりどこでもLTEで繋がりました。
今回は数時間のトランジットのみだったので、市内には出ず空港内だけの利用でしたが、フィンランドはモバイルネットワークがしっかりしている国なので都市部や郊外などでもエリア的にはそこまで問題ないはずです。
ちなみに帰国するときも同じくヘルシンキ経由だったので、行きと帰りにスピードテストを行ってみました。
ダウンロード、アップロードともに5〜8Mbps程度となっていますが、つい先日回線速度の上限引き上げが行われたので、フィンランドのような通信インフラがしっかりしている国だと今回の結果の倍程度の速度が期待できます。
遅延の大きさを示すPingの値は100ミリ秒前後と、許容範囲内といったところ。ストークモバイルの場合、通信がインターネットに出ていくブレイクアウト地点はドイツのフランクフルトです。フィンランドはフランクフルトからやや距離があるため、このようなPingの結果となっていますが、ドイツに近いエリアだとPingの値はもっとよくなります。そしてドイツ国内だと国内通信と同レベルになります。
ヘルシンキ空港ではレストランで小腹を満たしつつ、仕事に勤しんでいるとあっという間に次の便の時間になりました。
オーストリアで通信チェック
ヘルシンキからフィンエアーを乗り継いで南に。フィンランドの次はオーストリアの首都ウィーンを訪れました。
フィンエアーは欧州圏内のフライトでも機内WiFiが使える便が多いです。全てではないようですが、今回私が乗った便でもちゃんと機内WiFiが使えました。機内WiFiのプランはオンラインチェックインの際に一緒に購入することができます。
iPhoneはヘルシンキでの設定のまま、ウィーン国際空港(VIE)に到着してフライトモードを解除するだけで問題なくオーストリアの回線に繋がりました。
ウィーン国際空港では 3 (Three) AustriaのLTEに接続されました。
このローミング通信先キャリアの情報はStork Mobile 公式サイトのデータプランのページで確認することができ、オーストリアでは3 (Three)の他にA1というキャリアにも接続できることがわかります。
尚、3 (Three)は3G/4G(LTE)、A1は3Gのみになります。
iPhoneでは「ネットワーク選択」の設定がデフォルトで「自動」となっているため、複数のローミング接続先がある場合は接続時点でより品質が良いと思われるネットワークに自動的に繋がる仕組みになっています。ただし、後述しますが、このネットワーク選択を手動で設定することで、通信が安定する場合もあります。
オーストリアには行きと帰りで合わせておよそ1日半ほどの短い滞在ではありましたが、空港と市内の間、そして市内いろいろ足早に観光した限りではモバイル通信は概ね良好でした。
ウィーン国際空港とウィーン市内でスピードテストを行った結果がこちらです。
ヘルシンキの時よりもPingの値がよくなっているのは、ウィーンの方がフランクフルトに距離的に近い結果です。これくらいの遅延であれば全く気にならないレベルです。
通信速度については現在はこの結果よりも倍ほどになっているはずなので、十分快適な速度だと思います。
尚、通信インフラがある程度しっかりしている国であれば日本と同じく3Gでも十分快適な速度が期待できます。(個人的には3Gや4G/LTEをそこまで気にする必要はないと思っています。)
ウィーンでのeSIM利用中、ひとつ気になった点として、稀にうまくデータが流れないことがありました。アンテナピクトは正常に表示され、電波も十分なのにデータを読み込めないといった症状です。
こういった場合はiPhoneの設定から、モバイル通信プランの中のStork Mobileをタップし、「ネットワーク選択」で自動と設定されているものをオフにした後、検出されるネットワークから A1 あるいは 3 (Three) を手動で選択することで、そのキャリアにずっと繋がるようにできるので、これでぼほぼ問題は解消されました。
これについてはアプリ内の「トラブルシューティング」という箇所にも説明が載っています。少し手間ではありますが、トライする価値はあると思います。
この問題については個人的にはeSIMというよりもどちらかというとiPhone側の挙動の問題のような気がしています。実際過去に他のeSIMを使った時にも同様の症状が発生した記憶があります。少なからずストークモバイルでは各国のローミングキャリアを公式サイトに記載しているので、通信事業者の手動選択を行う場合にもどのネットワークを選択すればいいかの確認ができます。
ウィーンでは限られた時間ながらもいろいろ歩いて回りましたが、建造物、街並み、どこもとても綺麗でした。市街地では今流行り?の電動スクーターもいたるところにありました。
写真はLimeのスクーターですが、これ以外にもBirdなど複数の企業がサービスを展開しているようでした。
ワンポイントアドバイスとして、ヨーロッパで広く使われているBoltなどのタクシーアプリも、これらスクーターのシェアリングアプリなども、あらかじめ日本でアカウント登録して使えるようにしておくことをオススメします。全てではないですが、認証の方法としてSMSが必要なアプリも多く、ストークモバイルはじめ普通eSIMはどれもSMSに対応していないことから、現地だと登録が完了できなかったり、あるいは日本のSIMでSMSを受信しなければ使えない場合があるからです。
美しいウィーンの街を電動スクーターを使って見てまわるのはかなりオススメです。
モンテネグロで通信チェック
ウィーンからはオーストリア航空でモンテネグロの首都ポドゴリツァに飛びました。
モンテネグロは2006年に独立したまだ新しい国で、人口は70〜80万人ほど。行くまで知らなかったのですが、南はアドリア海に面しており、中部北部の山並みも非常に綺麗な国でした。また、治安もとてもよく、物価も西欧に比べると格段に安いです。
今回モンテネグロには仕事の関係で3泊4日滞在しました。首都だけではなく、車で南の方へも足を運びました。
Stork MobileのeSIMでの通信は、カバレッジ的にはまず問題なしで、ほぼどこでも通信はできました。ただ、都市部以外では電波がEDGE(2G並の速度)になることもしばしばで、EDGEの場合はやはり速度がかなり遅かったです。
もちろん市内などでは普通に3Gで通信ができ、速度も特に格別遅いということはありませんでした。参考までに、空港(EDGE通信)と首都の市街地(3G通信)でのスピードテスト結果がこちらです。
3G(右側)はギリギリまあ使えるレベル、EDGE(左側)はかなり低速なのがお分かりいただけるかと思います。
先日回線速度の上限が引き上げられたとはいえ、このレベルの通信速度だと体感はそこまで変わらない可能性があります。
今回現地の物理SIMは購入していないので比較はできませんが、もしかすると現地で物理SIMを購入して、eSIMはバックアップ用として使う方がベターかもしれません。モンテネグロではTelenorの他にもT-MobileがプリペイドSIMを販売しているようでした。ただ、空港では簡単に変えるような店舗は見当たらなかったので、市内でないと買えないかもしれません。
ハンガリーで通信チェック
帰りはウィーン、ヘルシンキと経由して帰る前にハンガリーの首都ブダペストにもちょっとだけ寄ることができました。
モンテネグロの首都ポドゴリツァからはハンガリーの格安航空会社Wizz Airがブダペストまで直行便を飛ばしていました。
たまたまかもしれませんが、今まで乗ってきたLCCの中でもシートのクッションが一番悪く、値段相応という感じでした。
ブダペストのリスト・フェレンツ国際空港でも問題なく現地のネットワークにつながりました。
ハンガリーでのローミング先はVodafone Hungaryです。こちらもしっかりLTEでした。
ブダペストでもウィーンと同様、空港から市内まで特に問題なくインターネットを使うことができました。
Stork Mobileの場合、ハンガリーでのローミング先はVodafone一択なので、ウィーンの時のように通信事業者を手動で選択/指定する必要などはなく、終始LTEで問題なく通信ができました。
こちらが空港と、市内中心部でのスピードテスト結果です。Pingも100ミリ秒を切っており、許容範囲内。速度もダウンロード、アップロードともに快適レベルでした。これが現在だと倍近くまで速度が上がっているはずです。
ブダペストからウィーンへはヨーロッパではお馴染みの交通手段である長距離バスを利用しました。チケット購入時にバス内はWiFiが使えると書いてあったのですが、いろいろ試しましたが結局使えず。Stork MobileのeSIMで終始ネットをしていました。オーストリアの国境付近まで全てVodafoneのLTEでしっかりカバーされており、問題なくインターネットを使うことができました。
ちなみにオーストリアに入ってからも少しはそのままVodafone Hungaryの電波を掴んでいました。その後は電波が弱くなってきたので一度フライトモードに入れて、またオフにすると今度はオーストリアのネットワーク 3 (Three) につながりました。
バスの中ではiPhoneのテザリング(インターネット共有)を利用してノートパソコンを使っていたのですが、Stork Mobileの場合、テザリングを使う時はAPN設定が必要です。設定自体は非常に簡単ですし、公式サイト内にAPN設定方法が記載されています。
ちなみにAndroid端末の場合、通常のモバイルデータ通信を使う場合にもAPN設定が必須になります。
まとめ
今回フィンランド、オーストリア、ハンガリー、そしてモンテネグロの4ヶ国に計6日間ほど滞在し、使ったデータ量は1.4GBほど。予想していたよりもだいぶ少なかったです。一番滞在が長かったモンテネグロで速度が遅かったり、なにより仕事で忙しくそこまでiPhoneを触っていなかったというのも理由かと思います。モンテネグロで泊まっていたホテルには十分使える無料WiFiもあったので、パソコンはそのWiFiを使っていましたし。
ストークモバイルのアプリではこのようにデータ使用量、残量、有効期限などをチェックすることができます。また、アカウントの画面では今まで利用した国が表示されます。
肝心のヨーロッパでの通信品質ですが、ざっと感じたことを列挙すると、
- 北欧含めヨーロッパの中でも栄えている国では通信速度は快適レベル(特に先日の回線速度の上限引き上げを考慮すると)
- 通信の遅延はフランクフルトから近いほど少ない(が、フィンランドなど比較的離れている国であってもそこまで気になることはない)
- モンテネグロなど通信インフラがまだ発展していないと思われる国では通信速度が微妙(現地SIMなどをトライした方がベターかも)
- 国や端末によっては通信がたまに不安定になることも(その場合は通信事業者を手動で選択 / 指定)
- テザリング(インターネット共有)使用時はAPN設定が必須
- ヨーロッパで複数の国を訪れる場合はやはりローミング通信が便利
- ホテルや空港、長距離バスなどのWiFiは100%信頼できないので、モバイル通信(eSIM等)があればとても安心
といったところでしょうか。
料金的には安いとは言えど、まだまだ物理SIMの方が金額だけで言えば安かったりします。ですがeSIMは購入から使用開始までがスピーディーで楽なのと、日本の物理SIMを端末から出す必要が一切ないので紛失の心配がないというメリットがあります。価格をとるかそれ以外のメリットに価値を感じるかは人それぞれかと思いますが、Stork Mobileに限らずeSIMも確実に検討の余地がある選択肢だと個人的には思います。
補足として一点。Stork MobileのeSIMではポケモンGOやそのほかの特定のアプリに接続できないことが稀にあり、いろいろ調査したところ、どうも通信に使われているIPアドレスの一部がフィルタリングされているケースがあるようです。これについてはフライトモードをオン/オフすることで、新しいIPアドレスが割り振られ、解決する場合もあります。