auの海外データeSIMをアジア2ヶ国で使ってみたものの... イマイチでした

タイのバンコクとベトナムのホーチミンを訪れる機会があったので、海外データeSIMを2ヶ国で使ってみました。

auの海外データeSIMをアジア2ヶ国で使ってみたものの... イマイチでした
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auの海外データeSIMは2020年11月30日をもってサービス終了となりました。

「海外データeSIM」とは au(KDDI、沖縄セルラー)が提供している、海外で利用可能なeSIM向けプリペイドデータ通信サービスで、2019年4月に提供が開始されました。正式名称は「海外データeSIM powered by GigSky」で、その名の通りGigSkyのシステムをほぼそのまま使ったOEM的なサービスです。

これまではサービスを利用できる国がアメリカやカナダ、メキシコなど北米と一部南米エリアに限定されていたのですが、2019年7月19日に地域が大幅に拡大され、現在96の国と地域で利用可能となっています。

ちょうど7月末にタイのバンコクとベトナムのホーチミンを訪れる機会があったので、ここぞとばかりにこの海外データeSIMを2ヶ国で使ってみました。

使用した端末はSIMロックフリーのiPhone XSです。

海外データeSIMの概要や料金

公式サイトより

公式サイトでは休暇目的の海外旅行者よりもどちらかというと留学や出張で海外に長期滞在する人をターゲットにしているように見受けられます。

特徴として、(GigSkyのシステムを使っていることから)QRコードの読み取り不要で専用アプリからeSIMをインストールし、利用を開始できます。自分はGigSkyのアプリも使ったことがあるのですが、何から何までほぼほぼ同じです。ロゴや名前をすり替えたくらいじゃないでしょうか。

ちなみにこの海外データeSIMはauユーザー以外も使うことができます

ただし、専用アプリが現在のところiPhone版しかないので、対象端末は iPhone XS / XS Max / XR に限られます

サイトには海外でも24時間電話サポートが受けられると記載がありますが、これはau携帯電話の音声通話を利用する必要があるようなので、auユーザーに限定され、かつ海外からの通話なので結構料金がかかるかもしれません。

利用できる国・地域

なぜか公式サイトでは利用可能な国の情報についてはリンクはあるのですが肝心の中身が掲載されておらず、以下ニュースリリースから拝借します。

au ニュースリリースより

北米、アジア・オセアニア、ヨーロッパ、中東・アフリカ、中南米と地域的にもかなり網羅されています。

日本からの旅行先として人気のあるグアムやサイパン、ハワイ、そしてアジアの主要国シンガポール、マレーシア、タイ、香港でも利用できます。ヨーロッパもスイス含め主要な国はほぼ全て対象となっています。

ただ、一点気をつけたいのが日本は対象外ということです。なので、日本で事前に通信確認などはできません。

データプランと料金

シンプルに以下の2種類のみです。

  • 5GB / 30日: 5,800円
  • 8GB / 30日: 8,900円

対象エリア内でデータ通信を開始した時点から、データ容量を使い切るか30日経過するまで利用できます。

本家GigSkyが基本的に5GBでUS$50なので、5GBプランはauもGigSkyもだいたい同じくらいの金額です。8GBプランは au のみのプランのようで、GigSky側にはありません。

正直なところ、この海外データeSIMに関してはコストパフォーマンスはそこまでいいとは言えません。

データプランの購入とeSIMインストール

ここからは実際に海外データeSIMを使用する流れを説明します。

まず、App Storeから専用アプリをダウンロードします。

こちらのオレンジのアプリで、提供元はauではなくGigSkyになっており、OEM感満載です。

ちなみに日本だけでなく海外のApp Storeでもダウンロード可能で、英語名は「Travel Data eSIM」です。

ダウンロードが完了したら、アプリを起動させます。

まず2つのグローバルデータプランのどちらを購入するか選択し、次にアカウントを作成します。今回は数日しか使わない予定だったので、5GBプランを選びました。

(私はauユーザーではないので普通にここでアカウントを作成しましたが、多分auユーザーであってもこの海外データeSIM用のアカウント作成は必須かと思います。)

メールアドレスとパスワードを入力し、「新しいアカウント作成」をタップするとアカウント登録確認メールが届くので、メール内のリンクをクリックして確認作業を行ってください。

アプリ上の画面はそのまま次に支払いへと進みます。

支払いにはAMEX、VISA、MasterCardのクレジットカードか、au Walletプリペイドカードを利用できます。auかんたん決済は利用できません。

この支払いについては、クレジットカードの登録(追加)操作となるようで、作成されるアカウントにそのクレジットカード情報が保存されます。個人的には都度クレジットカードを入力する方がセキュリティー的に安心するので、この仕様はあまり好きになれません。(支払いが完了した後にアプリの「支払情報」というメニューから登録されていたカード情報を削除できました。)

カード情報と住所等の情報を入力し、「データプランの購入」をタップすると、その後はeSIMを端末へインストールするプロセスに進みます。

eSIMのインストール自体はアプリ完結型というだけあって簡単でした。

ただ、次から次へと新しい画面が表示され、どれもワンタップするだけではありますが画面遷移数的にはけっこうあります。

途中追加するeSIM(正確にはモバイル通信プラン)に名前を付けることができるので、ここでは「au」とラベリングしておきました。

(尚、この時点ではiOSのバージョンが12でしたが、iOS 13からはプロセスが若干ですが変更されています。)

モバイル通信プランの追加完了後、それをモバイルデータ通信に設定すると1分ほどでアンテナピクトが表示されました。

このように GigSky LTE の表示になりました。

ちなみにこの状態で日本でネット接続を試してみましたが、やはりデータ通信はできませんでした。逆に国内ではデータ通信が発生しないので、データプランが開始されることはないという安心感もあります。

これでデータプランの購入、eSIM(モバイル通信プラン)の追加が完了し、準備OKです。

タイのバンコクで通信チェック

バンコクの空港に到着後は、iPhone XSの設定からモバイルデータ通信に au(海外データeSIM)のeSIMを設定するだけでOKでした。こちらでも1分前後で現地のネットワークに接続されました。

タイでも日本と同じく表示は GigSky LTE。

尚、データローミングはOFFでも通信可能です。

スピードテスト結果

滞在は数日だけでしたが、バンコクのスクンビット周辺、アソーク周辺など主に繁華街で複数回スピードテストを行ってみました。

下りはややばらつきがあるものの、総じて数Mbps〜10Mbps未満。上りはやや遅く、数Mbps程度でした。

そしてここが一番重要なのですが、通信の応答速度を表すPingが300ミリ秒台の後半になっており、遅延がかなりあるのがわかります。また、一部パケットロスも発生しています。

下りの速度だけ見るとそこまで遅いようには見えないかと思いますが、実際に使った感覚から言うと遅延の影響で体感速度はかなり遅かったです。

これはGigSkyのゲートウェイがアメリカにあることが原因で、毎回通信がアメリカまで行って返ってくるのでその分時間がかかってしまう、という感じです。

個人的にはいかにPingが大事かを実感しました。

実際この旅行では3香港のeSIMも併用しましたが、スピードテストの結果ではauのeSIMの方が速いときでも、3香港のeSIMでは常時Pingが100ミリ秒を切っていたので体感速度としては3香港の方が速かった感じです。

テザリング

auの海外データeSIMではテザリング(インターネット共有)も特別な設定なしに普通に使えました。

iPhone XSとMacBook Air(2018)を繋いでChromeブラウザで速度等を測ってみた結果がこちら。

海外データeSIM バンコクでインターネット共有利用時

レイテンシ(Ping)が400ミリ秒の大台に達してしまっています。そして速度自体もダウンロード、アップロードともに遅いです。

テザリングが使えるという時点でまあ最低ラインはクリアしていますが、やはり遅延が悩める問題です。仕事などでタイムリーな通信を求める場合はなるべく海外データeSIMは避けた方がよさそうです。

タイで使えるeSIMは他にもいくつかありますが、そこまで大量のデータを使用しないのであればやはり3香港(Three HK)がベストな選択肢かと思います。香港にゲートウェイがあるので遅延もそこまで悪くないです。詳しくは過去の体験レポートにまとめているので参考にしてみてください。

【タイ編】バンコクで3香港のeSIMを使ってみた感想 | eSIMDB

ベトナムのホーチミンで通信チェック

次の目的地、ホーチミンまではバンコクから飛行機で2時間弱。

ここでも空港に着いてすぐiPhoneのモバイルデータ通信にauのeSIMを設定するだけで、1分ほどで繋がりました。

ベトナムでは GigSky 3G。LTEではありませんでした。

ホーチミンでも市内と空港で何度かスピードテストをしました。

結果はこちらの通り、けっこう全体的に遅いです。

ところどころましな値はありますが、体感としては終始遅いと感じるくらいの速度でした。バンコク同様、Pingの値が大きいので遅延の影響がかなりあったのかと思いますが、特にお昼の時間帯はだいぶ遅いと感じました。

併用していた3香港のeSIMでもスピードテストの数値はあまりよくなかったので、現地の通信インフラ的な問題で全体的に速度は低めなのかもしれません。

海外データeSIMを使って、ホーチミンでもインターネット共有を使った場合の通信速度を測ってみました。

海外データeSIM ホーチミンでインターネット共有利用時

こちらもなかなか醜い結果となりました。

下りが160Kbpsと、いわば日本の格安SIMのお昼の低速時並。そしてレイテンシ(Ping)にいたっては500ミリ秒に迫る勢いです。

このレベルの通信だと本当にTwitterやメール、そして軽いネットブラウジングくらいが限度かと思います。写真が多いWebページや動画などはかなり時間がかかるはずです。

やはりタイ(バンコク)同様にベトナム(ホーチミン)でも海外データeSIMは快適なデータ通信からは程遠いという印象です。

最後に、データ残量や有効期限についてですが、これらはアプリから簡単に確認することができます。

非常にシンプルですが、画面はこんな感じです。アプリを開くとすぐに表示されます。


海外データeSIMの総合評価

アジア2ヶ国での利用からの判断にはなりますが、auの海外データeSIMのメリットは

  • アプリからeSIMをインストールできる
  • 利用できる国と地域が多い

くらいでしょうか。逆にデメリットと感じたのは

  • データプランの種類が少なく、大容量プランのみ
  • GigSkyのゲートウェイの関係上、北南米以外では遅延がかなり大きく、それが体感速度に大きく影響する
  • 現状iPhoneでしか使えない

といった点。

北米に数週間程度滞在する旅行者向けにはある程度使える選択肢になるかとは思いますが、アジアに1週間程度とかであれば個人的にはあまりオススメしません。また、ヨーロッパであればこの海外データeSIMよりももっと安価な選択肢があるので、こちらもあまりオススメできません。

ということで、現状は上に述べた一部の旅行者以外にはあまり適していないeSIM、という評価に至ります。