【海外旅行での利用】eSIMのメリット・デメリットを自身の利用経験から徹底考察
今まで40以上の旅行eSIMを実際に使ってみた経験から、海外旅行時のeSIMのメリット・デメリットをまとめました。
日本でも2021年に国内大手キャリアすべてがeSIMに対応し、最近はニュース記事などでも頻繁にeSIMという言葉を目にするようになりました。
また、近年発売されるスマートフォンはほぼすべてeSIM利用可能となっており、多くの人がすでにeSIMを利用できるデバイスを持っているという状況になっています。
そんな中、コロナがほぼ終息した2023年からは本格的に海外旅行時のインターネット利用手段としてプリペイドeSIM(いわゆる旅行eSIM)を利用する人が急激に増えているように思います。
しかし既にeSIM対応のiPhoneやAndroid端末を持ってはいるけど「旅行時に本当に使えるものなのか」半信半疑という方や、まだ持ってはいないけど便利そうなのでeSIM対応スマートフォンに買い換えようか悩んでいる、という方も多くおられるかもしれません。
この記事では、今まで40以上のeSIMを実際に海外旅行で使った自身の経験から、旅先でのネット利用の選択肢としてのeSIMのメリット・デメリットをまとめてみました。
メリット
ここではある程度コストを抑えた海外旅行先でのモバイルインターネット利用手段としてプリペイドSIMカードとWi-Fiレンタルを主な比較対象と想定し、旅行eSIMのメリットを解説します。
すぐ買えて、すぐ使える
旅行前に日本のAmazonなどでSIMカードを購入するにせよ、現地の空港やコンビニ、モバイルショップで購入するにせよ、物理SIMの購入にはいくらかの時間と手間がかかるものです。
日本で事前にネットで買っておく場合も実際に届くまでに日数はかかりますし、現地で購入する場合も店頭で並んだり詳細や設定方法を聞いたりと、時間や労力は多少なりとも必要です。
WiFiレンタルについても同様で、あらかじめネットで予約をし、自宅に郵送してもらったり、当日空港のカウンターで手続きを行う必要があります。また、最後には返却という手間も発生します。
eSIMの場合は購入から使用開始まで全てオンラインで完結するため、出発ギリギリでもネット環境さえあれば購入できますし、なんなら現地到着後にWiFiを使って購入することもできます。そして購入からものの数分でインターネットを使い始めることができます。
特に滞在が一週間以内や数日といった短い旅行でせっかくの現地での時間を最大限に使いたい方や、直前まで仕事でバタバタしていたり旅行の準備が苦手な方にとっては、eSIMは準備がほぼ不要でサクッと購入&利用開始ができる便利なツールです。
また、すぐ購入できてすぐに使えるということは、例えばメインのネット利用手段に物理SIMカードやWiFiレンタルを使っていた場合でも、万が一それらが動かなくなったりトラブったときのバックアップとしてすぐに旅行eSIMに切り替えるといった使い方もできます。
SIMの入れ替え不要 = SIMを失くす心配がない
従来の物理SIMに書き込まれているプロファイルと呼ばれるデータをネット経由でダウンロードできるのがeSIMのミソ。
SIMピンを使って端末からSIMトレイを出して、小さなSIMを丁寧に取り出して、次のSIMを向きを合わせながら挿入する、という一連の行為が不要になります。
WiFiレンタルの場合も持ち歩く端末が1つ増えるわけですから、失くす可能性は出てきてしまいます。そのため有償の補償サービスというのもあったりしますが、追加のコストが発生します。
eSIMであれば物理SIMを取り出す必要がないので、SIMを失くす心配がありません。
これまでmini、micro、nanoとSIMのサイズがどんどん小さくなってきており、取り外したSIMを失く可能性も少なからず上がっていますし、日本で使っているSIMを失くしてしまったらかなり面倒なので、このリスクがなくなるのは非常にありがたいです。
2つ以上のプロファイル(通信プラン)を保存できる
複数の国や地域を移動する旅行の場合、WiFiルーターレンタルでは全ての国で使えるプランを選択するか、2台以上をレンタルする必要があり、どちらにせよ高額な出費になることがあります。また、物理SIMについてもローミング対応1枚で比較的安価に済ませることができる場合もありますが、複数のSIMを購入し、持ち歩いたり入れ替えたりする必要もあります。
eSIMであれば1台の端末に最大8つまでインストールすることができ(しかもこの上限も今後増える可能性あり)、渡航先の国や地域によって最適なプランやプロバイダーを簡単に切り替えることができます。
例えば日本からまず香港にいき、そこからインドを経由してヨーロッパに行くといった若干イレギュラーな場合でも、eSIMを切り替えて使うことによってそれぞれの国でベストなデータプランを都度利用することができるわけです。
もちろん、帰国後に日本の回線に切り替えるのも、端末の設定からすぐに変更可能。
さらに、iPhone 13 シリーズからはeSIMを同時に2つ有効化できるデュアルeSIMが可能となっています。電話着信やSMSの受信は日本で使っているメインのeSIMで、現地でのインターネット(データ通信)だけプリペイドの旅行eSIMを使う、というように、海外旅行時の使い分けが便利になりますし、今後このデュアルeSIMが多くのデバイスで使えるようになっていくはずです。
種類が豊富で場合によっては安い
旅行eSIMはここ数年でかなり事業者が増えており、その種類はすでに物理SIMカードやWiFiレンタルより圧倒的に多いはずです。
旅行eSIMの検索・比較サイト eSIMDB をみると、その事実が一目瞭然。
例えば以下はアメリカで使える旅行eSIMを比較一覧ページですが、執筆時点ですでに40サービス以上、800を超えるデータプランがヒットします。
一日〇GBといったデイリープランもあれば、データ無制限プランもあったり、様々です。
そしてこれは旅行eSIM全般に言えることですが、少ないデータ容量(GB)、あるいは短い利用期間であれば、旅行eSIMの方がWiFiレンタルやプリペイドSIMよりも価格が安い傾向にあります。
初期不良含め物理的なトラブルがない
物理SIMの場合、稀ではありますが初期不良品に当たってしまったり、途中でチップ部分に傷が入って認識されなくなったりと、物理的な故障がないとは言い切れません。また、端末側のSIMトレイが原因で挿入したSIMが認識されないといった問題もあるようです。
eSIMの場合、プロファイルはデジタルなデータ形式であり、また外部に触れるようなチップ部分もないため、上記のような物理的トラブルの心配はありません。また、理論的には経年劣化の心配もありません。
端末以外何もいらない
WiFiルーターのレンタルのように追加で端末を持ち歩いたり充電したりする必要がありません。このメリットに関しては物理SIMを使う場合も同じですが、eSIMではSIMカード自体の取り扱いも不要なので本当の意味で端末以外何も物理的なモノが不要です。
なるべく荷物を減らして身軽に旅行をしたい、といった方には理想的な海外でのインターネット利用の形であると言えます。
スマートで新しい
これはメリットと言えるかどうかわかりませんが、新しいeSIMという技術を使うということ自体への楽しみという面もあるように思います。
これからはeSIMが一般的なものになっていくと思いますが、まだ現時点ではある意味新しいものの先取り感は体感できます。そういったテクノロジーの進化を体験することに価値を見出す人や、新しいもの好きの方にはeSIMは面白いはずです。
デメリット
意外とメリットよりもデメリットの方が知りたい、という方も多いのではないでしょうか。自分もあまり知らないモノを購入するときはデメリットについて色々調べる派です。
料金面では必ずしも最も安い選択肢ではない
メリットのセクションで「場合によっては安い」という表現を使いましたが、価格面では必ずしも旅行eSIMが常に一番安いというわけではありません。
国や地域、あるいはデータ容量によってはまだまだ物理SIMやWiFiレンタルの方が安く済むことはあります。
数百円から千円前後の差であれば、面倒なSIMの入れ替えや追加のデバイスを持ち運ぶ手間、そして時間節約という意味でeSIMを選ぶという選択も十分あり得ると思います(自分は正直そのは派です)が、価格差がそれ以上開く場合だとあえてeSIMを選ぶ動機はやはり減ります。
ただ、これについては時間の問題で、現在世界中で販売されている旅行者向けプリペイドSIMカードのeSIMバージョンがどんどんでてくると、将来的には価格差はほとんどなくなると考えられます。逆に、eSIMでは物理的なカードの製造費や運送費などが一切不要になるため、販売者側はeSIMの方がコストを抑えられる可能性も十分あります。そしてその結果物理SIMより安くeSIMが提供できるようになるかもしれません。
実際、ここ数年で旅行者向けeSIMサービスの数もかなり増えてきており、選択肢が非常に多いということはメリットのセクションでも書いた通り。そして価格もここ1、2年でどんどん下がってきています。
現地の電話番号が付属しない場合が多い
物理SIMの場合、現地の電話番号が付いたSIMで、且つ無料通話や無料SMS利用分がパッケージになったプリペイドSIMも多くありますが、eSIMの場合は現状データ通信専用が大半です。こういった場合、インターネットを利用したVoIPアプリ(LINEやWhatsApp、Facebook Messengerなど)で通話は可能ですが、電話番号を使った電話やSMSの送受信はできません。
今後eKYCといったオンラインID確認の普及により、電話番号付きのeSIMも徐々に増えてくると個人的には予想していますが、ここはやや時間がかかるかもしれません。
とはいえ既にVoIPが主流になっているので、通話への需要というよりもSMSの送受信としてのニーズが残っている、という印象で、ここのニーズは限定的かもしれません。
使える端末が限られている
このデメリットについても時間の問題でしょう。
iOS端末については2019年以降のiPhone、iPadはすべてeSIMに対応しています。そして今後リリースされるiPhoneやiPadもすべて対応することはほぼ間違いありません。さらに、iPhone 14以降米国ではeSIMオンリーに移行しつつあります。
AndroidについてもGoogleのPixelシリーズやサムスンのGalaxyシリーズを筆頭にここ数年でどんどんeSIM対応Android端末は増えてきており、業界としては(一部の廉価版を除き)eSIM対応はほぼマストになりつつあると言えます。というかゆくゆくはeSIMオンリーがほぼデフォルトになるはずです。
このように、物理SIMからeSIMへのシフトは不可逆的なもの、かつ現在進行形と言えるでしょう。
なので今このタイミングでeSIM対応のスマートフォンを持っていなかったとしても、その人が次に買い換える時はeSIM対応のスマートフォンになる可能性は非常に高いと思います。
ローミング通信のものが多い
*ここは若干テクニカルであり、気にする人の方が少ないかもしれません。
各国で売られている旅行者向けのプリペイドSIMは(近隣諸国でも使えるプランを除き)ローカル回線( = 現地の通信事業者のネットワークに直接繋がり、国外に通信が出ないこと)がほとんどなのに対し、旅行eSIMの主流は現状ローミング通信(= 一度他の国の通信会社のネットワークを経由したのち、その国のネットワークに繋がること)です。
一般的にローミング回線はローカル回線よりも遅延が大きくなります。通信の遅延が大きくなるとインターネットの速度がもっさりと感じたり、レスポンスがやや遅く感じます。通話で相手の声がワンテンポ遅れて聞こえたりすることも。
どれくらい体感として影響があるかは物理的な距離によって大きく異なり、例えばマレーシアでシンガポール経由のローミング通信を使っている場合は物理的に二国間の距離が近いためほとんど体感に影響はないですが、アメリカで日本経由のローミング通信を使う場合はそこそこ体感的にもっさり感じるはずです。
ここは一概にデメリットと言い切れない部分でもあり、且つ気にする気にしないは人それぞれですが、一般論としてはローミング通信は遅延が大きくなりがち = 若干レスポンスが遅く感じる、ということになります。
慣れるまで少し戸惑う可能性あり
これは新しいテクノロジー全般に言えることではありますが、やはりeSIMも最初はややとっつきにくい、どうやって使うのかわかりにくい、という印象を持たれる方も多いと思います。
インストール自体もQRコードを読み取る必要があったり、インストール途中の設定もやや難解だったり。何度か実際に使うとすぐに慣れますが、最初はやはり少し戸惑うことは十分あり得ます。
個人的な感想
今回デメリットも複数挙げましたが、料金や対応端末、慣れの問題など、ほとんどどれもいわば時間の問題で、徐々に解決されていくと期待しています。
かなりバイアスのかかった一個人の意見ではありますが、eSIMは上記のデメリットを考えてもそれを補う明確なメリットがあると感じています。そしてそもそも業界的にeSIMへのシフトは止まらないでしょう。
SIMの入れ替えや別デバイスを持ち歩く必要がないこと、ものの数分で購入から利用開始までできて準備や現地で時間や労力を使わなくていいことは、多少料金が高くなってもeSIMを選択するメリットになり得ます。
もちろん旅程や予算によりけりですが、少なくとも旅行eSIMは物理SIMやWiFiルーターレンタル、そして今回は取り上げませんでしたが海外データローミングといったその他の選択肢と同レベルで利用を検討できるまでに既にきていると思います。
ということで、もしeSIM対応の端末をお持ちの場合は、次の海外旅行はeSIMの利用を検討してみてはどうでしょうか?バックアップとして存在を知っておく、あるいは使い方を把握しておくだけでもいざという時に役に立つはずです。今や海外旅行にモバイルインターネットはほぼ必要不可欠ですからね。
そして各国で使える旅行者向けプリペイドeSIMの検索と比較は eSIMDB でどうぞ 👇