なぜAppleは物理SIMスロットを廃止し、eSIMオンリーにしたいのか

iPhoneから物理SIMスロットが廃止され、eSIMオンリーになるという噂がでています。米国版と日本版で時期が異なる可能性や、廃止の意図や背景を考察します。

なぜAppleは物理SIMスロットを廃止し、eSIMオンリーにしたいのか
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2022年9月のイベントでAppleが米国版iPhone 14 & iPhone 14 PlusがeSIMオンリーになることを発表しました!

2018年9月に発売開始した iPhone XS シリーズ以降、これまで Apple がリリースしたすべてのiPhoneがeSIMに対応しています。

遅かれ早かれいつかは物理SIMスロットがなくなり、eSIMオンリーになる、というのは以前から予想されていることで、単に時間の問題と言われています。

事実、iPhone 13 ではついにeSIM同士でのデュアルSIM(DSDS)に対応したり、最近ではiOSが機種変更時のeSIMへの転送に対応したりと、Appleは着々と物理SIM廃止へ前進していると思われます。

そして2022年、ここにきて今年秋に発表予定の iPhone 14 では一部物理SIMスロットがなくなるかも?という噂が出てきています。

それまでの予想では2023年リリースの iPhone 15(のハイエンド機種)から廃止という説が有力でした。

上の記事の内容は、Apple から米国の大手キャリアに「2022年9月までにeSIMオンリーのスマートフォンを発売できる準備をしておくように」という連絡があった、というものです。(信憑性が高い情報はどうかは不明。)

ただし、この噂はあくまで米国版の iPhone 14 の話なので、もし仮に本当に iPhone 14 からeSIMオンリーになるようなことがあっても、日本版については異なる可能性も大いにあります。

(というか個人的には米国版以外のiPhoneではeSIMオンリーは 15 以降ではないかと予想しています。)

5Gのミリ波の前例のように、米国版iPhoneだけスペックが異なるというのは可能性としてはあり得ると思います。

All Colors of the iPhone 11 Pro

なぜ Apple は物理SIMスロットを廃止したいのか

これまでホームボタンやイヤホンジャックを廃止し、さらにLightningポート(充電ケーブル差し込み口)をも廃止して完全ワイヤレス充電オンリーにするのではという噂もある Apple なので、物理SIMスロットをなくそうとしているというのも全くもって理解できる話ですが、個人的にはいくつかそれを進めたい意図があると思っています。

複数の回線を保持し、容易に切り替えができる

物理SIMでは現実的に2つのSIMカードが限界ですが、eSIMであれば物理的なスペースの限界はなく、3つ以上の回線も容易にiPhoneに追加することができます。また、使用する回線の切り替えも設定から数タップで可能。そして今後は機種変更時もeSIM(回線)ごと新しい端末に移行することができるようになると言われています。ということで、機能性としてもユーザーエクスペリエンス的にもより優れていると言えます。

物理的な不具合の可能性を排除したい

最近のiPhoneでは非常に稀だとは思いますが、SIMトレイやSIMの金属チップ部分との接触など、物理的なモノならではの不具合のリスクは必ずあります。もちろんソフトウェアはソフトウェアで異なるリスクはあるものの、タッチスクリーン以外でユーザーが直接触るタッチポイントは最小限にしたいという意図はあるはずです。

限られたスペースを有効利用したい

個人的にはこれがかなり大きな理由だろうと思いますが、通信モジュールはもうSoC(System on Chip)にまとめて、より付加価値の高いカメラなりAIなりの機能向上、あるいはバッテリーなどによりスペースを割きたいというエンジニアリング的意図があるのだと思います。

より優れたセキュリティー

一般的にeSIMは物理SIMよりもSIMスワップ等の被害にあいにくい、と言われており、実際AppleもiPhone 14のプレスリリース内でeSIMオンリーにすることのセキュリティー面に言及しています。

耐水・防塵性能をさらに高めたい

↓のApple公式ページにも記載がある通り、iPhone 7 以降コンスタントに防沫・耐水・防塵といった性能は向上しています。

iPhone 7 以降の防沫・耐水・防塵性能について
iPhone の防沫・耐水・防塵性能について説明します。また、iPhone を誤って濡らしてしまった場合の対処法もご案内します。

Apple としては今後さらにこれらの性能を高めるため、できるだけ穴や溝、接合部分がない、一枚岩に近いiPhoneを目指しているはずです。

美しいボディーに仕上げたい

上に書いた耐水や防塵といった性能という観点以外にも、単純にプロダクトとしての「美」を追求する Apple としては、よりエレガントなiPhoneを作り上げたいと思っているはずです。そういったデザイン性という観点でも、なるべく穴や接合部分を無くしたいわけです。

製造コストカット

ここは正直知識があまりないので、具体的な数字や根拠があるものではないのですが、SIMスロットありとなしでは製造コストも多少変わってくるように思います。いわばパーツが一つ減るわけですから、その部分だけ見るとコストカットになるはずです。

ただし、eSIMはeSIMで追加でエンジニアが必要だったり、いろいろ研究開発にコストがかかるとは思います。


以上のようにいろいろな意図や背景が考えられますが、いずれにせよ物理SIMスロットがなくなり、eSIMオンリーになるのはもはや時間の問題と思います。少なくとも iPhone については。