【海外旅行での利用】eSIMのメリット・デメリットを自身の利用経験から考えてみた

最近日本でもeSIM関連の記事やニュースを目にする機会がだんだん増えてきました。

日本の国内3大キャリアは依然としてeSIMに対応しておらず、多くの場合メインのユースケースとしては海外旅行時が一般的かと思います。(海外では自国のメイン回線をeSIMに切り替えることができるケースが多くなってきていますが。)

しかし既に最新のiPhoneやiPad等のeSIM搭載端末を持ってはいるけど「本当に使えるものなのか」半信半疑という方や、まだ持ってはいないけど便利そうなのでeSIM対応スマートフォンに買い換えようか悩んでいる、という方もおられるかもしれません。

そこで今まで10社近くのeSIMを実際に使ってみた自身の経験から、海外旅行先でのネット利用の選択肢としてのeSIMのメリット・デメリットをまとめてみました。

今回はある程度コストを抑えた海外旅行先でのモバイルインターネット利用を前提とし、物理SIMを購入する場合とモバイルWiFiルーターをレンタルする場合を主な比較対象と想定しています。

pros and cons

メリット

すぐ買えて、すぐ使える

旅行前に日本のAmazonなどでSIMカードを購入するにせよ、現地の空港やコンビニ、モバイルショップで購入するにせよ、物理SIMの購入にはいくらかの時間と手間がかかるものです。

日本で事前にネットで買っておく場合も実際に届くまでに日数はかかりますし、現地で購入する場合も時間や労力は多少なりとも必要となります。

WiFiルーターレンタルについてもあらかじめネットで予約をし、自宅に郵送してもらったり、当日空港のカウンターで手続きを行う必要があります。また、最後には返却という手間も発生します。

eSIMの場合は購入から使用開始まで全てオンラインで完結するため、出発ギリギリでもネット環境さえあれば購入できますし、現地の旅行先でもWiFiを使って購入することもできます。そして購入からものの数分でインターネットを使い始めることができます

結果、トータルで購入から使用開始までの時間を節約することができます。

ゆったり数週間以上の旅ならまだしも、滞在が一週間以内や数日といった短い旅行の場合にせっかくの現地での時間を最大限に使いたい方や、直前まで仕事でバタバタしていたり旅行の準備が苦手な方にとってはeSIMは準備がほぼ不要でサクッと使用開始できる便利なツールです。

SIMの入れ替え不要 --> SIMを失くす心配がない

従来の物理SIMに書き込まれているプロファイルと呼ばれるデータをネット経由でダウンロードできるのがeSIMのミソ。

SIMピンを使って端末からSIMトレイを出して、小さなSIMを丁寧に取り出して、次のSIMを向きを合わせながら挿入する、という一連の行為が不要になります。

デュアルSIM端末の場合は入れ替える必要がないケースもありますが、渡航する地域や国が増えるとSIMの入れ替えが必要になってきます。

WiFiレンタルの場合も持ち歩く端末が1つ増えるわけですから、失くす可能性は出てきてしまいます。そのため有償の補償サービスというのもあったりしますが、追加のコストが発生します。

eSIMであれば物理SIMを取り出す必要がないので、必然的にSIMを失くす心配がなくなります。mini、micro、nanoとSIMのサイズがどんどん小さくなってくると同時に、取り外したSIMを失く可能性も少なからず上がっています。日本で使っているSIMを失くしてしまったらかなり面倒なので、この危険がなくなるのは非常にありがたいと思います。

SIM tray in smartphone

2つ以上のプロファイル(通信プラン)を保存できる

複数の国や地域を移動する旅行の場合、WiFiルーターレンタルでは全ての国で使えるプランを選択するか、2台以上をレンタルする必要があり、どちらにせよ高額な出費になることがあります。また、物理SIMについてもローミング対応1枚で比較的安価に済ませることができる場合もありますが、複数のSIMを購入し、持ち歩いたり入れ替えたりする必要がでてくることもあります。

eSIMであれば複数のプロファイルを1台の端末にインストールすることができます。例えば新型iPhoneでは10個(あるいはそれ以上)のeSIMプロファイルを保存しておくことができ、その国その国で最適なプランやプロバイダーを使うことができます。

例えば日本からまず香港にいき、そこからインドを経由してヨーロッパに行くといった若干イレギュラーな場合でも、eSIMを切り替えて使うことによってそれぞれの国でベストなデータプランを都度利用することができるわけです。

初期不良含め物理的なトラブルがない

物理SIMの場合、稀ではありますが初期不良品に当たってしまったり、途中でチップ部分に傷が入って認識されなくなったりと、物理的な故障がないとは言い切れません。また、端末側のSIMトレイが原因で挿入したSIMが認識されないといった問題もあるようです。

eSIMの場合、プロファイルはデジタルなデータ形式であり、また外部に触れるようなチップ部分もないため、上記のような物理的トラブルの心配はありません。

端末以外何もいらない

WiFiルーターのレンタルのように追加で端末を持ち歩いたり充電したりする必要がありません。このメリットに関しては物理SIMを使う場合も同じですが、eSIMではSIMカード自体の取り扱いも不要なので本当の意味で端末以外何も物理的なモノが不要です。

なるべく荷物を減らして身軽に旅行をしたい、といった方には理想的な海外でのインターネット利用の形であると言えます。

スマートで新しい

これはメリットと言えるかどうかわかりませんが、個人的には新しいeSIMという技術を使ってデジタルに、そしてスマートに旅行先でインターネットを使う自分に対する一種の自己満足感やクールさみたいなものがどこかあると思っています。

これからeSIMがメジャーになっていくかはまだわかりませんが、ある意味新しいものの先取り感は体感できます。そういったテクノロジーの進化を体験することに価値を見出す人や、新しいもの好きの方にはeSIMは面白いはずです。

iPhones and Pixel phones

デメリット

料金面では必ずしも最も安い選択肢ではない

これは市場がまだ成熟しておらず、eSIM向けのサービスを提供するプレイヤー(プロバイダー)が少ないことに起因していると思われますが、国や地域によってはまだまだ物理SIMやWiFiレンタルの方が実際安く済むこともよくあります。

数百円から千円前後の差であればSIMを失くす心配や時間節約をお金で解決するという意味でeSIMを選ぶ、という方もおられるとは思いますが、料金だけを見ると必ずしも一番安い、というわけではない場合も多々あります。

ただ、これについては時間の問題で、現在市場で売られている物理SIMのeSIMバージョンがどんどんでてくると、将来的には価格差はほとんどなくなると考えられます。逆に、eSIMでは物理的なカードの製造費や運送費などが一切不要になるため、販売者側はeSIMの方がコストを抑えられる可能性も十分あります。そしてその結果物理SIMより安くeSIMが提供できるようになるかもしれません。

現地の電話番号が付属しない場合がほとんど

物理SIMの場合、特にアジア圏だと現地の電話番号が付いたSIMで、且つ無料通話や無料SMS利用分がパッケージになったプリペイドSIMも多くありますが、eSIMの場合は現状ほぼ全てデータ専用です。インターネットを利用したVoIPアプリ(LINEやWhatsApp、Facebook Messengerなど)で通話は可能ですが、電話番号を使った電話やSMSの送受信はできません。

今後電話番号付きのeSIMプリペイドプランも出てくる可能性はありますが、昨今はWhatsAppやLINEのようないわゆるメッセージングアプリで事足りることがほとんどなので、電話番号やSMSが使えなくてもあまりデメリットに感じない旅行者は意外と多いかもしれません。

使える端末が限られている

このデメリットについても(比較的長いスパンではありますが)時間の問題かと思います。

iOS端末については最新のiPhone、iPadがeSIMに対応しています。AppleはeSIMに積極的なため、今後リリースされるiPhoneやiPadは廉価版を除いて多分全て対応してくると思いますので、iOSのeSIM対応端末はどんどん増えていくことが予想されます。

Android端末はメジャーどころではPixel 3、3aシリーズがeSIMに対応していますが、日本版についてはFeliCaと入れ替えでeSIMが外されています。今後世界的にみるとeSIM対応のAndroid端末は間違いなく増えてくるとは思いますが、日本に限って言えば大手キャリアの動向次第、といったところでしょうか。

Windows PCのタブレットラップトップ端末の中にも一部eSIMが利用できるものがあります。

補足ですが、最近のニュースでは2020年以降リリースされるMacBookが5G対応するかもしれないという噂もあります。"Always Connected PC"を掲げるMicrosoft同様、AppleもノートパソコンにWiFi以外のセルラー通信モジュールを搭載させてくる可能性は十分にあります。そうなればAppleのことなのでスペースの関係もあり、物理SIMなしでeSIMのみといったこともやりそうです。

今回はスマートウォッチなどのウェアラブル端末はほとんど取り上げていませんが、すでにeSIMを搭載するスマートウォッチも複数ありますし、今後eSIM対応のウェアラブル端末も増えてくるはずです。

Apple Devices

OS側の問題やバグが現状まだある

これはeSIMという新しいテクノロジーを利用するにあたって、まだオペレーティングシステム側が発展途上、といった感じです。

例えばiOSだと各eSIMに名称を設定できるのですが、設定したはずの名前がいつの間にか消えてデフォルトの名前に変わっていたり、(私自身は経験がありませんが)ネット上の情報ではeSIMプロファイルのインストールで不具合が発生したといった問題も稀にあるようです。

また、Androidは手動でのプロファイルインストール方法が非常にわかりにくかったりとまだまだiOS以上に問題が存在します。

これら以外にも(海外旅行時の利用に限ってはそこまで問題にならないかもしれませんが)、一度インストールしたeSIMは他の端末に移動させることができない場合がほとんどなので、端末を買い替えた時は少し面倒です。これ自体はOS側の問題だけではなくeSIM自体がまだ発展途上の技術であるということになりますが、いずれにせよ現状利用するにあたって留意しておいた方がいい点です。

ソフトウェアというのは最初からバグなしに完璧に動くということはほぼありえないので、実際に発生した問題やユーザーからのフィードバックに対して開発側が順次対応することが大事になり、eSIMも例外ではありません。今後標準化を担うGSMA、各国のキャリア、OS開発側がそれぞれしっかり対応してくれれば、もっと使いやすい、トラブルの少ないものになるはずです。


個人的な感想

今回デメリットも複数挙げましたが、料金や対応端末、OS側の問題など、ほとんどどれも時間の問題で後々解決されると期待しています。

かなりバイアスのかかった一個人の意見ではありますが、eSIMは上記のデメリットを考えてもそれを補う明確なメリットがあると感じています。日本のメインSIMを失くす心配がないことや、最短の時間で購入から利用開始までできて準備や現地で時間や労力を使わなくていいことは、多少料金が高くなってもeSIMを選択するメリットになり得ます。

もちろん旅程や予算によって他の選択肢を選ぶ場合もありますが、少なくともeSIMは物理SIMやWiFiルーターレンタル、そして今回は取り上げませんでしたが海外データローミングやソフトSIMといったその他の選択肢と同レベルで利用を検討できるまでに既にきていると思います。

そしてなにより、新しい便利なテクノロジーで、自分としてはクールでスマートなものだと感じています。