eSIMとは?知っておきたい内容を出来るだけわかりやすく解説 !

2018年にAppleがiPhone XS / XS Max / XRを発表して以降、日本だけでなく世界的にも着実に認知度が高まっているeSIMについて、従来の物理SIMとの違いも含めて網羅的に説明します。

尚、2019年以降に発売されたiPhoneとiPadはすべてeSIMに対応しています。もちろん、新型iPhone SE (2020)も。また、Android端末についても日本版ではPixel 4から対応。そしてGalaxyシリーズも海外版ではGalaxy Foldなど上位機種の一部から次々とeSIMに対応してきています。

まずはじめに「SIM」ってなに?

SIM(シム)は、Subscriber Identity Module の略で、契約者情報などの様々なデータが書き込まれた小さなチップです。これをスマートフォンなどの携帯電話に入れることによって、SIMに登録されている電話番号で電話をかけたり受信したり、モバイルネットワークに接続してインターネットを使うことができるようになります。逆にSIMがないと、スマートフォンは電話番号も使えないし、インターネットもWiFiでしか使えません(4GやLTEが使えない)。SIMは言わば、携帯電話の頭脳、といったところでしょうか。

SIMカード自体は30年程前から実用化されており、スマートフォン以前のガラケー時代から多種多様なモバイル端末で使用されています。

一般的にSIMカードは物理的に入れ替えることができるので、お持ちのスマートフォンやタブレットでも取り外したり、入れ直したりすることができます。iPhoneの場合は一般的に以下の図の場所あたりから取り外しが可能です。

次世代規格「eSIM」(イーシム)とは

eSIMとは embedded SIM の略で、埋め込み型のSIMという意味です。スマートフォン等の端末に物理的なSIMカードを挿入するのではなく、あらかじめ端末の内部にチップ(モジュール)が埋め込まれていて、そこに必要な情報をあとから追加(書き込み)して使用します。そのモジュール自体は端末に埋め込まれているので従来のSIMカードのように取り外したり、入れ替えたりすることはできません。

サイズ的には物理SIMの中でもっとも小さいnano SIMの約半分のサイズになります。

従来のSIMとの機能面での大きな違いは、契約者情報等(プロファイル)を物理的なSIMカードの差し替えなしにネットワーク経由で自由に書き換えできることです。今まで物理SIMカードを差し替えて行っていた通信会社(ネットワーク)の変更を、eSIM対応端末では新しいプロファイルをダウンロードすることによって物理的なものの入れ替えなしに行うことができます。

これはCDやDVDがディスクからデジタルコンテンツのダウンロードに変わったことに近いかもしれません。以前まではCDやDVDを借りに行ったり配送してもらったりしていたものが、今はインターネット経由で音楽や映画をダウンロードしていつでもどこでも楽しむことができます。CDやDVDプレーヤーのディスクを入れ替える必要はありません。そしてプレーヤーというハードウェアは不要で、スマートフォンやタブレット、PC上で再生することができます。

また別の例で例えるとすればゲーム機です。以前(ニンテンドーDSくらい)まではソフトはカセットタイプの物理的なものでしたが、ニンテンドー3DSやNintendo Switchではソフトはダウンロードできるデジタルなものとなっています。

これらとほぼ同じことで、従来のSIMカードはその名の通りカードタイプの物理的なものでしたが、eSIMではプロファイルと呼ばれるいわばゲームソフトの中身のようなデータをネットワーク経由でダウンロードする方法で(ゲームソフトを変えるように)通信事業者を変更します。

ここで両者の違いを図で説明してみます。

従来の物理SIMカードではプロファイルと呼ばれるキャリア情報や契約者情報等のデータがSIM自体にあらかじめ書き込まれています。一方eSIMでは端末自体にチップ型SIM(正式名称はeUICC)が埋め込まれており、ここにネットワーク経由でプロファイルというデータをダウンロードします。

簡単に言えば端末内にすでに箱(ハード)が用意されており、その箱に中身(ソフト)を入れる、という感じです。

そしてこのプロファイルをネットワーク経由(大概の場合インターネット経由)で書き換えることをリモートSIMプロビジョニング(RSP)と呼びます。

ここら辺のテクニカルな部分についてはGSMAのeSIMホワイトペーパーを要約した記事がありますので、そちらを参照ください。

eSIMが指すものはコンテキストによって異なる

上の図のように従来ひとつであったチップ(ハード)と中のプロファイル(ソフト)がeSIMでは分かれています。そのため端末側に埋め込まれているモジュール(eUICC)のことをeSIMと呼ぶ場合もあれば、ダウンロードするプロファイルの方をeSIMと呼ぶ場合もあるのが実情です。

前者はその名の通り端末に埋め込まれているSIMモジュールということでまさしくeSIMがあらわすものとして用語的な意味合いで正しい使い方なのですが、実際の会話などでは「複数のeSIMを使ったことがある」など、後者のプロファイルのことをeSIMと呼ぶことも少なくありません。いわば口語的な使われ方、と言えるかもしれません。

このようにコンテクスト(文脈)によってeSIMが指すものは正確には異なる場合があるのですが、とりあえず頭の中でeSIMという仕組みを理解しておれば会話は成り立つので問題ないかと思います。

eSIMがもたらす恩恵

では従来の物理SIMと比較したとき、eSIMによって何がどう変わり、どういった恩恵を受けることができるか考えてみたいと思います。

様々なコスト削減に繋がる

ここでいうコストは単に金銭的なコストだけではありません。まず、利用者の観点からは通信会社との契約や変更の際に店舗まで行ったりSIMカードが届くのを待ったりする必要がなくなります。インターネットさえあればいつでもどこでも新規契約をしたり、乗り換えをすることができるようになり、経済的&時間的なコスト削減になります。

事業者の観点では、そもそもSIMカードを製造する必要がなくなります。そしてSIMカードを輸送したり、各店舗で管理したりするコストも不要です。

まさしくCDやDVDがデジタルコンテンツ配信によって製造や輸送、管理コストがなくなるのと同じです。

もちろん事業者にとっては最初はシステム構築という初期投資が必要になりますが、長期的なランニングコストはeSIMの方が小さくなるはずです。

また、端末を製造するメーカーにとってもeSIMは従来のSIMよりもかなりサイズがコンパクトで必要とするスペースも少ないため、長期的にはコスト面で有利に働くとも言われています。いずれにせよメーカーとしては限られたスペースの中で性能アップを図ることが求められるため、SIM周りで必要となるスペースが小さくなることは朗報です。また、SIMスロットがなくなることは防水や防塵の対応が楽になることも意味します。

旅行者にとって非常に便利

日本にいるときは頻繁に通信会社を変えるというケースは少ないかもしれませんが、eSIMは海外海外旅行の時に役立ちます。

海外でモバイルインターネットを利用する方法の一つとして現地のSIMの購入するという方法がありますが、このeSIMを使えば物理的なSIMカードを購入して差し替える必要なく、インターネット経由でいつでもどこでも購入でき、すぐに利用を開始することができます

また、SIMカードの差し替えが不要なのでSIMを失くす心配もなくなります

最近のハイエンドスマートフォンではDSDS(デュアルSIMデュアルスタンドバイ)やDSDA(デュアルSIMデュアルアクティブ)といった機能を搭載する端末も出てきているので、海外旅行先でも日本のSIM(番号)で通話や受信をして、データ通信だけは他の通信会社をeSIMで使う、といったこともできるようになります。

海外旅行時のeSIMのメリット・デメリットは以前記事にまとめているので、こちらもご参照ください。

【海外旅行での利用】eSIMのメリット・デメリットを自身の利用経験から考えてみた
今まで10近くのeSIMを実際に使ってみた自身の経験から、海外旅行先でのネット利用の選択肢としてのeSIMのメリット・デメリットをまとめてみました。

複数のプロファイル(契約者情報)を保存できる

一般的に現在市販されているeSIM対応の端末では2つ以上のプロファイルを保持できます。簡単に言えば、デュアルSIMのスマートフォンのようにSIMカードを複数(2つ以上)入れておけるということになります。最大数については埋め込まれているeSIM(チップ)のスペックによるようですが、通常は10以上可能です。これは物理SIMではまず現実的に不可能な個数です。

プロファイルを新たに取得する場合は、インターネット経由でダウンロードする必要がありますが、既に保存しているプロファイルを切り替えるだけであればインターネットは必要ありません。

万が一メインで使っている通信会社のネットワークに何らかの問題が発生したとき、すぐに他のネットワークに切り替えたり新たに契約することということも可能です。

日本は遅れているeSIMというデジタルシフト

物理SIMからeSIMへの転換は、様々な分野で昨今起こっているハードウェアからソフトウェアへのシフトの新しい事例と言えるでしょう。

これまでに挙げたCDやDVDのデジタルへのシフト、ゲーム機ソフトのカセット型からダウンロード型へのシフト以外にも、様々なデジタルシフトが起こっており、物理SIMからeSIMへのシフトもそのひとつと捉えることができます。

そして世界中の多くの人がスマートフォンやタブレットを持っている今、そしてこれからの時代、このeSIMの与える影響は決して小さくないはずです。いずれはeSIMに代表されるリモートSIMプロビジョニングがセルラー通信のデファクトスタンダードになるのではないでしょうか。

しかしながら日本においては大手3キャリア(docomo、au、SoftBank)がいずれも正式にeSIM対応を発表していません。かたや世界では多くの通信事業者がeSIMに対応しています。これからもその数はどんどん増えるはずです。

いずれは国内大手3キャリアもeSIM対応するとは思いますが、他の先進国と比較して遅れているという現実は隠せません。

ちなみに最近日本ではRakuten miniがeSIMオンリーの端末ということで界隈で話題になりました。そしてIIJもフルMVNOとしての強みを活かし、以前からeSIMのサービスを提供しています。総務省がフルMVNOではないMVNOに対してもリモートSIMプロビジョニング機能を開放するよう3キャリアに要請したりと、国内でも少しずつ動きはあるので今後の展開に期待したいところです。


ここからは補足情報です。

国際標準規格eSIM

これまでこの記事で述べてきたeSIMについての情報や仕様は、GSMA(GSM Association)と呼ばれる世界の通信会社やモバイル通信に関係した事業会社が参加する業界団体の定める標準規格に準拠したeSIMを想定したものです。

iPhoneやPixel、Galaxyシリーズなど一般的に世に出回っているeSIM対応端末のほとんどがこのGSMAスタンダードに準拠したものとなっていますが、一部例外のものもあり、それらは仕様面で一部この記事の内容と異なることもあることをご注意ください。

eSIMは契約者情報という重要なデータがインターネット経由で移動するため、セキュリティーに十分配慮しなければなりません。GSMAはeSIMを可能な限り安全に使用できるようにするため、非常に強固なセキュリティー基準を設けています。この基準に適合した企業や団体だけが、GSMA標準のeSIMを製造・提供できます。

eSIMはIoT/M2Mでも活躍

実はeSIMはIoTの分野では以前からすでに使われている技術です。

「様々なモノがインターネットに繋がる」IoTではSIMを使ったセルラー回線も無線通信方法のひとつです。物理SIMと比べてeSIMでは省スペースで済むためデバイスをより小型化、軽量化することが可能になります。

また、Connected Carに代表されるような、使用する国が複数であったり都度変わるという場合でもわざわざSIMを入れ替える必要なく、すべてリモートで通信事業者を変えたり一元管理することが可能です。

IoTの場合はコンシューマー向け(スマートフォンなど)とはやや異なる、サーバードリブンのプッシュモデルと呼ばれる仕組みが使われていますが、ネットワーク経由でプロファイルを(リモートで)プロビジョニングするという点は同じです。

selective photo of a cars character toy

eSIMの発展系「iSIM」

eSIMは端末に単独のモジュールが埋め込まれていますが、そのモジュールをSoC(System on Chip)と呼ばれるチップセットにあらかじめ載せてまとめたiSIMというものも開発されています。iSIMは integrated SIM の略になり、統合されたSIMという意味合いです。

このiSIMはeSIMよりもさらに必要スペースが小さく、そして省エネとも言われています。

iSIMについては以前に記事にまとめているので興味ある方は一読ください。

armが提唱するiSIMとは?eSIMとの違いなど
iSIMはまだまだ新しい技術・規格ですが、armの公式ブログなどを元にできる限りその内容をまとめました。